【山域・山名等】 | 北アルプス穂高岳・前穂高岳東壁・北穂岳東稜・滝谷ドーム中央稜 | ||||||||||||
【日時】 | 2006年08月11日(金)夜行〜16日(月) | ||||||||||||
【メンバー】 |
A隊【11日出発】CL古関正雄・石綿健一・津田 暢・井上哲也・上坂和久・村田昌宏 B隊【12日出発】CL安部浩章・岩橋 賦 C隊【13日出発】CL小松多治子・忍足朋美・中村裕子 | ||||||||||||
【ルート】 |
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【詳細】 | 08/11(金) | ||||||||||||
【A隊:古関・石綿・津田・井上(哲)・上坂・村田 夜に横浜より車にて沢渡まで】
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08/12(土)晴れ | |||||||||||||
【A隊:古関・石綿・津田・井上(哲)・上坂・村田 沢渡〜上高地〜徳沢〜奥又白の池まで】 【横浜〜入山 安部・岩橋】 例年この時期は、沢登りの裏合宿(?)に参加のため現役メンバーとの合宿は10年ぶりになるだろうか。土曜日まで仕事が入っていたので、本隊より一日遅れで入山する。 前穂の北尾根にしようか迷うが、槍、南岳、北穂を縦走し涸沢入りすることにした。 夕方より関東地方は雷雨となり、山手線、中央線は止まってしまう。8時に東神奈川の駅で岩橋と待ち合わせて八王子から1時間遅れのあずさ35号で松本へ向かう。午前 1時前に松本着。駅舎は建て替えられきれいなった自由通路には14,5人山屋が寝ているのみ。駅前には24時間営業のマックがあり若者で賑わっている。 (ここまで安部記)
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08/13(日)晴れ | |||||||||||||
【前穂高岳北壁〜Aフェース 石綿=津田】 起床すると外は風もなく晴れている。全日にパッキングを済ませていたので、朝食後各パーティー毎に前穂東壁に向かい出発する。池より奥又尾根へ、尾根から奥又白雪渓へ 踏み跡をたどってトラバース気味に進む。奥又白雪渓までは踏み跡が枝分かれしており、しかも藪で覆われているので先行した井上さんは大変だったろうと思う。雪渓に降りて アイゼンを着用した後、右上する。C沢出合では雪渓が切れていたので降りやすい所からクライムダウンして入り込む。C沢上部には雪渓が見えているのでアイゼンは着けたま まで進む。程なくチョックストーンが現れるので、ヒロケンのトポ通りガレた草付きを右上する。右上し過ぎるとC沢に戻るのが困難になるので適当な所からC沢に戻る。しば らく行くと雪渓も切れ切れになったためアイゼンを外す。さらに行くと左手にV峰リッジ上の平坦地と思われる地形が現れたが、トポにある『左上するインゼルを登る』ライン は浮き石が溜まっているため断念し、右上して岩場の上部から左へトラバースした。V峰リッジ上の平坦地で大休止し、登攀具を身につける。W峰東南壁や東壁Dフェースがは はっきり見え、気持ちが盛り上がる。 平坦地からV峰リッジを左上してB沢最上部へ。さらに北壁に左トラバースするが、浮き石だらけで石を落とさないで進むことが出来ない。幸いにも詰めているのは我々蝸牛 の3パーティーのみなので石を落としながらのアプローチとなる。結構傾斜のある北壁取付に到達し、石綿、津田の順でツルベ登攀を開始する。 1ピッチ目、出だしは岩溝で傾斜はそれほど無く、残置支点も多く見られる。1ピッチ目の終了点でロープを上げていると落石を発生させてしまった。浮き石の厄介さに気持 ちがヤキモキする。2ピッチ目、津田君リード。石綿が登って行くと「『松高カミン』は過ぎてしまったようですよ」とのこと。『松高カミン』は登る前から楽しみで意識して いたのだが…。『松高カミン』を特定できずに残念。あるいは派生ルートから登っていたのかも知れない。最終ピッチは津田君のリードであるが、どこを登ろうかと迷う。右は チョックストーンが引っかかっている。真ん中は凹角で傾斜もあり、手応えがありそうだ。左はトポのルート。どのルートも残置支点が確認できる。「最終ピッチなので充実し たい」と合意し、真ん中のルートに取り付く。登攀を開始するが、「見た目より傾斜がありますよ!ホールドが無い!」とのことでアブミの登場となる。アブミを掛け、体重を 乗せようとしたらシュリンゲが切れるといったアクシデントはあったが登攀終了。充実した登攀だった。終了点からは一登りで前穂高岳山頂。 3090mの山頂は朝と同じ快晴で、風も心地よく気持ちが良い。お互いに写真を撮り、ガチャを外す。古関=上坂ペア、Dフェース都立大ルートの井上=村田ペアを待つ間、山 頂を散歩したりトポを読み返したりレーションを食べたりしていた。朝が早かったので眠気もあり津田君は昼寝をしていたが、興奮が続いているようで眠れなかった。 (ここまで石綿記)
【前穂高岳東壁Dフェース:都立大ルート(W+、A1) 井上(哲)=村田】 BCから奥又白谷の雪渓に降り立つ。四峰正面壁・前穂東壁が朝焼けに照らされ美しい。シュルンド・クレバスに注意しながらC沢を詰め上部のインゼル上・四峰東南壁を進 路方向向かって東北東に見える辺りから三峰リッジを経てB沢へ下る。今回の雪渓の具合では、奥又白谷から直接、B沢も詰める事も可能であるように見えたが(雪渓はつなっが ていたと思われる)、B沢自体そんなに幅が広いものではないので東壁からの落石が直接B沢を伝ってくる事を考えるとやはりガイドにあるように今回取ったアプローチが定石 であるように思われる。取り付きまで四時間、ガイドに記載されいる時間の約2倍時間が掛かった訳だが時期・雪の状態によって、欺くも時間が変わるのがアルパインの魅力で あり、醍醐味であろう、程々に消耗させられましたが・・・。 【1P目40m(村田 W+、A1)】 ペツルハンガー1本とハーケン数本でのビレイ点から左上していき、2P目途中(ガイド図による)右上するハング帯の手前でハンギングビレイ。 概ねピンの状態は良好。一箇所だけリングが飛んでいて、古い3mmシュリンゲをアイスアックスで軽くテスティングして通過。 【2P目10m(井上 W-、A1)】 右上するハング帯の下をアブミトラバース。凹角部分、壁から壁へトラバースする部分が少しバランスが微妙。 【3P目50m(村田 W+、A1)】 数m登った後、ルートが二俣に別れ、幾分迷うが、左にルートを取り最初の核心・小ハングを乗越す。右は田山=山本の4P目だと思われる。このピッチのピンは総じて、腐食が 進んでいるように感じられ、効きが幾分甘い部分が見られた。2つ目の核心・ハング下を右上する部分では左に走るハンドサイズのクラックに人為的に打ち込んだと思われる5cm 四方・長さ30cm位の角材・くさびが二つ、階段宜しくあり、いつ打ち込まれたのか分からないがしっかり効いていた。くさびにハーケンは叩きこまれておらず、またアイゼンで踏ん だ跡も特段見られなかったが昔の人のクライミングに対する取り組みに少し思いを馳せる事ができた。程なく一・二峰リンネ末端に飛び出し、残置ハーケン1本にアングル1本を 打ち足しビレイ点とし井上さんを迎えた。 前穂に向うのに井上さんはリンネからダイレクトに前穂に向って登っていったが、自分は忠実にリンネを辿った。脆い岩と高度感に苛まれる事がない方を自分は選んだ。 【感想】この地域で最後まで難攻不落の壁として残されたDフェース(1979年刊:[穂高岳の岩場]より抜粋、また古関氏の話ではDフェースが陥落した時は新聞にニュースとして 掲載されたとの事)をトレースできた事は素直に嬉しいが、もう少しスケールの大きな壁・ルートだと今の自分の技術力・精神力・体力では不十分であろう。それは早く登る技術 であり、早く登ろうとする気持ちであり、それらの源である体力の不足であろう。それらを一つずつクリアしながら、屏風のディレッティシマをまたいつか・・・リベンジせねば。 (ここまで村田記)
【上高地〜槍ヶ岳 安部・岩橋】 駅前の松屋で朝飯を食べて、乗り合いタクシーで上高地へ。一人3千円が相場らしい。6時前に上高地バスターミナルへ到着。登山届けを提出しひたすら槍を目指す。 天気は快晴。前穂4峰の岩場がよく見える。快調に飛ばすが眠くてしょうがない。槍沢ロッジで40分ほど寝てから歩き始めるがどっと疲れが出てくる。槍沢大曲を過 ぎるころには完全にばてる。へろへろでなんとか3時過ぎに殺生ヒュッテにたどり着く。幕場にはすでに30以上の天幕が設営され結構な賑わいである。さっそく小屋で ビールと日本酒をいただく。幕を張ったら穂先まで行こうと話しをしていたけど、もう槍まで行く元気はなかった。 (ここまで安部記)
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08/14(月)晴れ | |||||||||||||
【A隊:古関・石綿・津田・井上(哲)・上坂・村田 奥又白の池より前穂北尾根5・6のコル経由で涸沢に移動】 【槍ヶ岳〜涸沢 安部・岩橋】 夜半雨が降っていたが朝にはやむ。軽量化のためシュラフカバーとフリースで寝るがそれ程寒くない。岩橋の持ってきたIBSのゴア二人テント のおかげである。4時半におきて朝食の準備をする。6時過ぎに幕をたたみ、出発する。 30分ほどで肩の小屋に着く。荷物を置いて穂先を目指す。順番待ちはないけれど、ぞろぞろと何人も梯子に取り付いている。頂上 は人でいっぱいである。快晴。穂先からは日本海が見え、小槍にはクライマーが取り付いている。目の前からはまっすぐ北鎌尾根が 伸びている。今度は北鎌をやりたいなと岩橋に話すと、冬ですねと返事が返ってくる。 南岳を越えるあたりまではそんなに人も多くなく景色を楽しみながら歩く。キレットの手前あたりから渋滞が始まる。縦走路はよ く整備され、核心部のトラバースには鉄板で足を乗せるステップまでつけられている。A沢のコルでは後ろを歩いていたパーティー が休憩中ザックを落とし、大きな音をたてて滝谷へ転がっていった。最後の北穂小屋の登りでは一時間ほどの渋滞につかまり、2時 過ぎやっと北穂小屋につく。皆さんデッキの椅子で旨そうに生ビールを飲んでいる。われわれはコーラで我慢して南稜を下る。 途中5,6のコルを下ってくる先発隊の姿が見え、コールが聞こえる。北穂東稜の取り付きを探しながら2時間ほどかかって涸沢 の幕場につく。われわれより一日遅れで入山した女性3人パーティーもすでに幕をはっている。合宿メンバー全員が揃いさっそくヒ ュッテの生ビールで乾杯する。 (ここまで安部記)
【上高地〜涸沢 小松・忍足・中村】 重い。重いぞ。学生時代の長期山行以来、久しぶりになかなか手ごたえのある重量のザックを背負った。食糧計画を考える時点で、 ある程度予想はついていた。でも、背負えないなら問題ありだが、背負えて歩けるなら問題ない。お忙しいところ、メニューを考え、 買出しをしてくださった小松さんと忍足さんに大感謝! 荷物は重いが、足取りは比較的軽い。なかなかの好タイムで横尾まで到着。本谷橋までは、忍足さんがとばす。ちょっと早すぎるの ではないか、と思うくらいだ。しかし誰もバテない。強い…。本谷橋からはゆるやかな登り。ペースを落として、ゆっくり登る。涸沢 まで、意外と時間がかかってしまった。やはり荷物の重さに負けてしまった。体力不足だとはあまり感じないが、やはり体力不足なの だろうか。涸沢手前でお腹が空き、休憩を取る。女性だけだと、何かと休憩も取りやすい。というか、甘えているだけ? 涸沢から東稜を眺める。長そうに見えるが、あっという間らしい。合宿以前に情報収集をしていたのだが、なかなか東稜の情報はみ つからなかった。そんなに人が入らないのか?簡単すぎるのか?もっと、しっかりと事前の情報収集を行わなければいけない。 (ここまで中村記)
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08/15(火)晴れ | |||||||||||||
【A隊:古関・石綿・津田・井上(哲)・上坂・村田 涸沢より北穂高岳を越えて滝谷ドーム中央稜】 【北穂東稜 安部・岩橋・小松・忍足・中村】 のんびり出発。夏だし、もう少し早くてもよかったのかも。取り付き地点手前の雪渓のトラバース、ガレ場歩き、取り付く前に少々 緊張させられる。落石が怖い。今まで普通の登山道では感じることのなかったものだ。皆広がって上がる。取り付き地点から核心部ま では、快適な歩きだ。しっかりとトレースがついている。登山道・上級者向けといった感じ。 槍と背後に広がる山々の大パノラマを眺めつつ、ここに来れてよかったと心から思う。ゴジラの背でザイルを出す。岩橋さんのトッ プ。少々時間がかかったが、難なく通過。頭上に接近してきたヘリからカメラで撮影される。何の撮影だったのだろう、新聞の一面に 載らないことだけを祈る(こんな姿見たら、親が泣いちゃうよ〜)。あっという間に懸垂下降ポイント。安部さんがまず下降。その後 女性3人、岩橋さんの順で下降。少々下降ポイントで足を置く場所に戸惑ったが、後は難なく下降。そして、あっという間に登攀終了。 意外と短い。充実感はあるが、腹5分目といったところだろうか。時間があるので、ゆっくり休憩。涸沢小屋の友人にもらったおは ぎを食べる。北穂小屋手前で落石。5分間ほどガラガラ…。ちょっとの落石が、大きな地形変化(や事故)につながるのだと実感する。 北穂小屋で大休止。その後、奥穂高岳に向けて歩く。途中、コールが聞こえる。ん?…お!滝谷組だ!しかも、叫んでいる。ものす ごく気持ち良さそうだ。ちょっと悔しい。よし、来年はあそこを登ってやる!できるかどうか判断する前に、勝手に決意を固めてしま った。その後、穂高小屋まで縦走。なかなか楽しい道だ。岩に慣れない一般登山者には、少々怖い場所かもしれない。時間をみて、奥 穂高はカット。休みすぎただろうか?ザイテングラードを通って、涸沢に下山。生ビールがおいしい。学生時代は、お酒は担いで上が るものだった(学生はお金がないので)。しかし、社会人になってお酒は小屋で買うものになった。社会人ってすごい。 (ここまで中村記)
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08/16(水)快晴 | |||||||||||||
今日も天気がいい。3日間とも天気がよく、思い切り日焼けする。やっぱり夏はこうでなくっちゃ! 下山開始前に、皆で記念撮影。11人が一斉に同じ山に取り付くことができるなんて、すごいと思う。あとは、問題なく下山。横尾 で先発パーティーが登った前穂高の壁を見る。人はあんな場所を登るんだな〜、というのが正直な感想。これからいろんな岩場を経験 したら、あの壁の凄さがわかるのだろう。早くわかるようになりたい。 3日間で得たものは、刺激と決意。山の壁を登るというのは、充実感も大きいし恐怖も大きい。何よりも、受ける刺激が大きい。山 からも人からも。そして、決意に結びつく。自分の目標を一つ一つクリアして、来年は滝谷へ! (ここまで中村記)
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